はじめに

不安定な国際情勢 最近の不安定な国際情勢が大変気にかかる。日々ニュースを見たり聞いたりするたびに、どうも愚痴や批判が先に出てしまう。心底から称賛し、大きな拍手を送ることができるニュースは実に少ない。自国中心で、すぐ相手を批判したり非難したり…

第一章 古代イスラエルやユダヤ人について

最初に、基礎的な理解を深めるために、古代イスラエルやユダヤ人について旧約聖書の時代に遡ってみる。 (一)アダムとエバ(イブ)から 旧約聖書によれば、「はじめに神は、光あれ!と命じ、続いて天地や動植物を創造され、最後に人間を創り、七日目には休…

第二章  イエス・キリストとキリスト教

(一)イエスの誕生とキリスト教 新約聖書からイエス・キリストとキリスト教について少し触れてみる。 ヘロデ王の晩年、前四年頃、ガリラヤ地方のナザレの町である。ダビデの血を引く大工のヨセフはマリアと婚約し結婚を控えていた。そんなある日、マリヤの…

第三章 ムハンマドとイスラム教、その後継者たち

(一)ムハンマド 五七〇年、ムハンマド(五七〇~六三二)はアラビア半島のメッカ(現在のサウジアラビアの都市)で、ヒジャーズ地方のクライシュ族の名門ハーシム家に生まれた。生まれた時にすでに父は亡くなっており、母も彼が六歳の時死亡した。最初祖父…

第四章 エルサレムをめぐる十字軍とイスラム教徒側の攻防

エルサレムは二代目カリフウスマンの時代、六三八年以降、ローマ帝国支配からイスラム勢力の支配下になっている。イスラム教徒の支配色が強いがエルサレムには聖墳墓教会があり、キリスト教徒にとっても大切な「聖地」となっている。キリスト教徒の巡礼や礼…

第五章 オスマン帝国の建国とイスラム勢力の拡大

(一)オスマン帝国の建国 一二九一年に十字軍の手からエルサレムを取り戻したトルコのイスラム勢力は、更に勢力圏を拡大した。 一二九九年、オスマン一世(在位一二九九~一三二六)がアナトリア(小アジア)地域を掌握し「オスマン帝国」を建国した。 (二…

第六章 フランス革命、産業革命を経て

(一)フランス革命、産業革命を経た世界 一八世紀から一九世紀にかけてフランス革命、産業革命を経て世界の状勢は大きく変化していく。一八世紀になるとオスマン帝国の権勢ははっきり陰りを見せ始めた。一七八九年、フランス革命が勃発する。絶対王政が倒さ…

第七章 シオニズム(ユダヤ人の祖国回帰)への動き

(一)シオニズムの胎動 フランス革命と産業革命、特に産業革命は資本主義を発達させ社会主義、共産主義の思想を生んでいく。その中で産業革命に成功した国家は先を争い第三世界の国々にその手を伸ばし、列強間の対立抗争を引き起こし、国家、人種の考えにも…

第八章 第一次世界大戦前後の中東情勢

(一)第一次世界大戦への足音 一八世紀末に起こった産業革命により成功したヨーロッパ列強は、次第にアフリカ、インド、東南アジアなど第三世界の国々を侵略し、植民地化に先を争い、自国の勢力拡大合戦にしのぎを削るようになる。 一八七五年にイギリスは…

第九章 ユダヤ側とアラブ側との対立激化

(一)ドイツナチス政権の反ユダヤ政策 第一次世界大戦で敗したドイツは、ベルサイユ条約で全植民地の放棄、軍備の制限、賠償金の支払いなどにより、国力、国民の生活は大きな試練を強いられることとなった。 一九三三年一月、ヒトラー率いる国家社会主義ド…

第一〇章 イスラエル国家の建国と第一次中東戦争                                                                                                                                                                                                                                        

(一)イスラエル国家の建国 一九四八年五月一四日の午後四時、テルアビブ美術館においてユダヤ国民評議会が開催された。議長デビッド・ベングリオン(一八八六~一九七三)は、明朝一五日午前零時をもって「ユダヤ人国家をイスラエルの地に樹立する」と建国…

第一一章 エジプトの動きと第二次中東戦争

(一)ナセル、初代エジプト大統領に エジプト、ナセル大統領に就任、ソ連に接近 一九五六年六月、エジプトのリーダーナセルは三八歳で大統領に就任した。ナセルは、主要政策として、スエズ運河地帯へのエジプトの主権回復とナイル川のダム建設による農工業…

第一二章 第三次中東戦争への足音

(一)第二次中東戦争後のイスラエル、国力を強化へ 一九五六年一一月、第二次中東戦争は終わった。イスラエルはエジプトから軍を引き上げ安全保障強化などの当初の目的達成はならなかった。だが二次にわたる中東戦争での反省から結果的に大規模な軍の機構改…

第一三章 第三次中東戦争とその後

(一)第三次中東戦争 イスラエルの先制攻撃で開戦 一九六七年六月五日午前八時過ぎ、「攻撃される前に攻撃すべきだ」とイスラエル空軍はエジプト、ヨルダン、シリア、イラクの空軍基地に先制の奇襲攻撃を行った、滑走路に並んだアラブ側の空軍はなす術もな…

第一四章 第四次中東戦争とその後

(一)第四次中東戦争 エジプトのサダト大統領、第三次中東戦争で失ったシナイ半島の奪回を策す エジプトのサダト大統領は一九七○年大統領就任当初、ナセルの敷いた汎アラブの対イスラエル強硬路線を継承していったが、次第にナセル時代のソ連寄りからアメリ…

第一五章 一九八〇年代の中東情勢

一九八〇年代に入ってさらに中東情勢は不安定で激変していく。その中東情勢の概略を年代順に見ていく。 一九八〇年 (一)エジプトとイスラエル国交樹立 一月、エジプトとイスラエルは前年の和平条約の正式調印を受けて国交を樹立した。 (二)イスラエル入…

第一六章 一九九〇年代の中東情勢

一九九〇年(平成二年)から一九九九年(平成一一年)までの主な中東情勢について年を追って見ていく。 一九九〇年 (一)イラク軍クエートに侵攻、湾岸危機の勃発 イラン・イラク戦争は一九八八年八月に終結したが、戦争の結果イラクにプラスは少なく借金は拡大…

第一七章 二〇〇〇年から二〇〇九年までの中東情勢

二〇〇〇年(平成一二年)から二〇〇九年(平成二一年)までの主な中東情勢について年を追って見ていく。 二〇〇〇年 (一)イスラエル軍、レバノン南部より撤退完了 目まぐるしい国際情勢の変化の中、イスラエル、パレスチナを取り巻く諸情勢も刻々変転し、予断…

第一八章 二〇一〇年から二〇一五年までの中東情勢

中東情勢を含め國際間の諸問題はますます複雑になり、解決困難な状況が重なってくる。 二〇一〇年(平成二二年)から二〇一五年(平成二七年)までの主なイスラエル、パレスチナ情勢について年を追って見ていく。 二〇一〇年 (一)トルコとイスラエル対立、ガザ…

第一九章 二〇一六年から二〇一八年までの中東情勢

アメリカにドナルド・トランプ氏が新大統領として登場してくる。 二〇一六年(平成二八年)から二〇一八年(平成三〇年)までの主なイスラエル、パレスチナ情勢について年を追って見ていく。 二〇一六年 (一)トルコとイスラエル、両国の関係改善へ大筋合意 ト…

おわりに

これまでパレスチナ問題に関わる諸事項を概ね年代順に見てきた。余りにも複雑すぎて焦点がどこにあるのか纏めきれない。当初からパレスチナ問題を分かり易く説明したり解説したりしようとしたものでないので、このような年表的記述方式では致し方ない。しか…